前立腺は、男性特有の臓器で、膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むように位置しています。この前立腺にできるがんが前立腺がんです。近年、高齢化や食生活の変化に伴い、日本でも患者数が増加しています。
早期の前立腺がんは、ほとんど自覚症状がありません。そのため、知らないうちに進行してしまうことも少なくありません。がんが進行すると、前立腺が肥大し、尿道を圧迫することで、以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状は、前立腺肥大症など他のがん以外の病気でも見られるため、「歳のせいだろう」と放置してしまう方も少なくありません。しかし、気になる症状があれば、放置せずに医療機関を受診することが大切です。
前立腺がんの早期発見には、PSA検査(前立腺特異抗原検査)が非常に有効です。これは、血液中のPSAというタンパク質の量を調べる簡単な検査です。前立腺がんになると、PSA値が高くなる傾向があるため、スクリーニング検査として広く用いられています。
PSA検査で異常値が出た場合、精密検査を行います。
精密検査は、前立腺の硬さや形を調べる直腸診、超音波を使って前立腺の形や大きさを確認する経直腸超音波検査などがあります。これらに加え、がんの確定診断には前立腺生検が必要です。これは、前立腺の一部を針で採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査です。
前立腺がんの治療法は、がんの進行度(ステージ)、患者さんの年齢、全身状態、PSA値、悪性度(グリソンスコア)などを総合的に考慮して決定されます。主な治療法には以下のようなものがあります。
早期で悪性度が低い前立腺がんの場合、すぐに治療を開始せず、定期的な検査で経過を観察する方法です。がんが進行する兆候が見られた場合に、次の治療を検討します。
がんを取り除く手術です。当院では、体の負担が少ないロボット支援手術も積極的に導入しています。より精密な手術が可能となり、術後の回復も早くなることが期待できます。
高エネルギーの放射線をがん細胞に照射して、がんを死滅させる治療です。手術が困難な場合や、患者さんが手術を希望されない場合に行われます。
前立腺がんは男性ホルモンによって増殖する性質があるため、男性ホルモンの働きを抑える薬を用いてがんの進行を抑制する治療法です。進行がんや再発がんの治療として行われます。
これらの治療法は、単独で行われることもあれば、複数を組み合わせて行うこともあります。